心臓
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症例 先天性左冠動脈口閉鎖症の1成人例
門脇 謙熱海 裕之佐藤 匡也阿部 芳久熊谷 正之
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1993 年 25 巻 3 号 p. 301-304

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抄録

僧帽弁閉鎖不全による心不全症状を契機として発症し,孤立性円錐枝と右冠動脈分枝による左冠動脈系への副血行路形成を形態的特徴とした先天性左冠動脈口閉鎖症の1成人例を報告する.症例は58歳,女性.負荷心電図で胸痛とST下降があり,断層心エコーで,腱索断裂,僧帽弁前尖の逸脱と僧帽弁逆流を,左室造影で3度の僧帽弁逆流を認めた.冠動脈造影で左冠動脈入口部を欠き,左冠動脈系への副血行路として右冠動脈直上に派生した孤立性円錐枝と左冠動脈前下行枝円錐枝とのVieussens ring,右冠動脈後下行枝および中隔枝と前下行枝末梢間,鋭縁枝と回施枝間の吻合が認められた.さらに,僧帽弁置換中の観察では左冠動脈口の欠損が確認され,本例は先天性左冠動脈口閉鎖症と診断された.本例に合併した僧帽弁閉鎖不全の発症は,加齢や冠動脈危険因子の関与などによる副血行路循環機能不全が生じ,やがて心筋虚血を基盤として腱索断裂から僧帽弁閉鎖不全に至った機序が推測された.

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