抄録
左冠動脈起始異常,冠動脈肺動脈瘻に発作性上室性頻拍症を合併した例を経験したので報告する.
患者は,63歳女性.昭和55年より頻拍発作出現.抗不整脈薬の内服にて継続加療中であったが,平成4年2月13日発作性上室性頻拍が約8時間持続し,その後も胸部不快感継続したため,精査目的にて入院.入院時心電図にて著変なし.頻拍発作時の心電図にてHR166/min,narrowQRSで逆行性P波の認めがたい発作性上室性頻拍を認めた.冠動脈造影にて,左冠動脈は右冠動脈洞より起始する冠動脈起始異常があり,また左前下行枝より肺動脈幹部へつながる冠動脈肺動脈瘻が認められた.電気生理学的検査にてjump up現象とともにPSVTが誘発され,房室結節リエントリー性頻拍と,診断された.抗不整脈薬による薬効評価を実施.Propafenoneの内服にて予防効果を認めた.本例は2種類の冠動脈奇形を有し,しかも発作性上室性頻拍を合併した極めてまれな例と考えられた.