心臓
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症例 PTCA後に発生したコレステロール結晶塞栓症にステロイドが著効した1例
安斎 均西山 信一郎小宮山 伸之坂本 直哉沖中 務岩瀬 孝石綿 清雄柳下 芳樹中西 成元関 顕原 満
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1995 年 27 巻 5 号 p. 440-446

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抄録

症例は72歳男性.1992年2月当院にて左前下行枝にPTCA(percutaneous transluminal coronary angioplasty)を施行.数日後より両下肢痛と紫紅色の皮疹が出現し,徐々に腎機能の悪化を認めた.同年9月精査目的に入院.皮膚生検にてコレステロール結晶塞栓症と診断.保存的治療によりいったんは軽快するも,同年12月腎機能の更なる悪化と肺うっ血を認め再入院となった.コレステロール結晶塞栓症の再発を疑い,この時点でステロイドを30mg/日で開始したところ,腎機能と皮膚症状の著明な改善を認めた.
コレステロール結晶塞栓症は大血管に存在するアテロームからコレステロール結晶がシャワー様に散布され全身の小血管に塞栓を生じる疾患であり,近年の血管カテーテル検査,治療の一般化によりその合併症としての意義が強調されてきている.我々はPTCA後に発生した当疾患に対しステロイドの投与を行い,腎機能,皮膚症状の著明な改善を認めた症例を経験した.これまでにステロイドが有効であったという報告はなく,その発生機序に免疫学的機序の関与が推察されることより,今後当疾患の治療においてステロイド治療は試みられるべきものの1つと思われた.

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