心臓
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症例 複雑型心室中隔解離から偽性仮性心室中隔瘤に発展し,心室中隔穿孔を生じた陳旧性心筋梗塞の1例
江本 因野村 周三手島 保柳瀬 治徳安 良紀桜田 春水本宮 武司古川 仁前村 大成清水 浩一後藤 一雄紺野 進
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1998 年 30 巻 10 号 p. 633-639

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抄録

症例は70歳の男性.3年来の狭心症歴がある.1994年8月30日,嘔吐を伴う前胸部圧迫感が約30分持続したが放置.10月初旬にも30分程持続する前胸部圧迫感を数回経験した.10月19日深夜,胸部圧迫感に続き呼吸困難が出現し徐々に増悪.近医にて心電図から急性下壁心筋梗塞を疑われ,発症約7時間後の10月20日早朝,当科に入院.
Killip III度の心不全を呈し,第4肋間胸骨左縁を中心にLevine 3度の全収縮期雑音を聴取した.冠動脈造影ではRCA#1:90%,LAD#6:90%,#9:99%,LCX#13:100%の重症3枝病変であった.左心室造影では下壁はakineticで,ここから右室に向かうシャントを認めた。左右シャント率は45.4%,心エコーでは心室中隔後基部に欠損を認め,蛇行した痩孔が中隔内を走り,カラードプラーで左右シャント血流を認めた.急性下壁心筋梗塞で生じた複雑型心室中隔解離が偽性仮性心室中隔瘤に発展し,慢性期に右室へ穿破することにより心室中隔穿孔を生じ急性心不全に至ったものと推定された.特異な形態およびメカニズムによる心室中隔穿孔について,文献的考察を含め報告する.

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