1998 年 30 巻 10 号 p. 641-646
主要冠動脈3枝に高度の冠攣縮を認め,気管支喘息発作が狭心症の発作に先行し,冠攣縮の誘因および致死的な1要因となった1例を報告する.症例は61歳,女性.主訴は前胸部痛である.56歳時より気管支喘息にて加療中であった.長時間胸部症状が続いたため急性心筋梗塞症を疑い,緊急冠動脈造影を施行した.左右冠動脈に著明な冠攣縮を認め,硝酸薬の大量冠動脈注入で改善した.十分な薬物療法を施行し,発作がコントロールできたので一時退院した.しかしその後,喘息発作が先行する狭心症発作を頻回に生じ,2回入退院を繰り返した.その際,前壁誘導,下壁誘導,高位側壁誘導に異時的にST上昇が心電図上記録された.以後も外来にて加療を続けたが自宅にて急死した.本例では喘息発作が冠攣縮性狭心症の致死的な1要因と考えられた.