心臓
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症例 心筋炎に合併した左室内血栓の1例
遠山 治彦金澤 嘉夫松岡 正純稲村 昌和藤末 浩美段 房美
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1998 年 30 巻 10 号 p. 647-652

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抄録

症例は60歳,男性.風邪症状にひき続き,食欲低下,ふらつきが出現し受診した.収縮期血圧は50mmHg,脈拍は102回/分であった.血液検査では,GOT,GPT,LDH,CPKの上昇を認め,心電図では,四肢誘導での低電位と,胸部誘導V1からV6でのST上昇を認めた.心臓超音波検査では,左室の壁運動のび漫性の低下,心嚢液の貯留を認め,左室心尖部には血栓を疑うエコー像を認めた.入院時,肺動脈楔入圧22mmHg,心係数1.69l/分/m2とForrester IV群であったが,利尿薬とドブタミンにて改善した.ペア血清ではインフルエンザAの抗体価の有意な上昇を認めており,このウイルスによる心筋炎と考えられた.
左室内血栓については,充実性の壁在血栓から,一部,低エコー領域(central echo lucency)を伴った血栓となり,完全に嚢胞状(cystic)の血栓となった後,可動性に富んだ充実性の血栓となり入院後11日目に消失した.血栓の継続的形態変化をとらえることができたという点で非常にまれな症例と考えられた.
また,心筋炎に合併した左室内血栓の報告も今まで内外で6例にすぎないが,この点でもまれな症例と考えられたため文献的考察を加え報告した.

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