抄録
【目的】 病的心におけるischemic precondition-ing (IP)の報告は少ない.そこで糖尿病ラットを用いてIPの心筋保護作用を細胞内エネルギー代謝の面から検討した.
【方法】 糖尿病ラット摘出心を用いてランゲンドルフ法により灌流し, 30分間の虚血および30分の再灌流を行った.30分の虚血に先立ち,5分間ずつ2回の虚血再灌流を行うIP群と行わないcon-trol trol群で,各々左室発生圧,冠灌流液中のcreatine kinase 活性,心筋組織内高エネルギーリン酸化合物,グリコーゲンおよび乳酸含量を測定した.また,再灌流後の心筋よりミトコンドリアを抽出し,ATPase およびadenine nucleotide translocase活性を測定した.
【結果】 IP群では左室発生圧の回復が良好で,再灌流後のcreatine kinase活性も低値であった.また,再灌流後の心筋内ATPおよびクレアチンリン酸含量はIP群で有意に高値で,30分間虚血直後の乳酸含量および虚血中のグリコーゲン分解量はIP群で低値であった.さらに,再灌流後のミトコンドリアATPaseおよびadenine nucleotide trans-locase活性は,IP群で有意に高値であった.
【総括】 糖尿病心においてもIPによる心筋保護作用が確認され,その機序として,虚血時の嫌気的解糖の抑制に基づく細胞内pH低下の抑制と再灌流後のミトコンドリアの酸化的リン酸化能の保持が重要と考えられた.