心臓
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症例 心内電位R波およびT波の二重感知によりICD不適切作動を生じた心サルコイドーシスの1例
笠井 英裕池主 雅臣種田 宏治田川 実藤田 聡鷲塚 隆相澤 義房
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2000 年 32 巻 7 号 p. 573-579

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抄録

洞調律時にQRS波とT波の二重感知のために植え込み型除細動器(ICD)の不適切作動を生じた心サルコイドーシスの1例を報告する.症例は65歳女性.1995年肺サルコイドーシスと診断された.1996年完全房室ブロックを生じ,プレドニゾロン(PSL)50mg/日が開始された.PSLで房室伝導は回復したが,減量後に心室細動を生じ,1998年4月,ICDの植え込みを行った.手術時リード固定部位の心内電位と刺激閾値は正常で,心室細動は20Jで洞調律に復した.心室細動中の心内電位も感度1.2mVで良好に感知された.しかし,術後35日目に洞調律時のQRS波とT波の二重感知によるICD不適切作動が頻回に生じた.T波のオーバーセンスは心内R波の減高とT波の増高によった.電位感度を順次0.9mVまで下げることで二重感知の頻度は減少したが,ICD不適切作動を完全に回避することはできなかった.術後4カ月目よりT波が減高し,以後ICD不適切作動はみられなくなった.リード固定部位の局所電位の変化はICD不適切作動の原因となる可能性があり,術後の経過観察が重要である.

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