心臓
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症例 家族性心房中隔欠損症の一家系
宇都宮 俊徳宮園 素明龍 俊宏吉田 和代尾形 徹辻 信介徳島 卓松尾 修三夏秋 正文伊藤 翼井上 純一
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2000 年 32 巻 7 号 p. 585-589

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抄録

心房中隔欠損症は,ほとんどの症例が孤発例である.しかし,家族性心房中隔欠損症(familial atrialseptal defect)の報告もまれに見られる.我々は,50歳男性を発端にして経験した,房室伝導障害を伴う二次孔欠損型の家族性心房中隔欠損症の4症例を経験したので報告する.
症例は50歳男性.1991年に不完全右脚ブロックを指摘され,心エコー検査などで心房中隔欠損症が疑われて,精査のため当科に入院した.心臓カテーテル検査で左右短絡率59.5%の二次孔型心房中隔欠損症と診断され,手術を施行して経過良好である.家族歴で,発端者の兄1人と息子2人が心房中隔欠損症で手術を施行していた.全例に,不完全右脚ブロックと1度房室ブロックを認め,伝導障害を伴う家族性心房中隔欠損症の1家系と考えられた.
本邦での家族性心房中隔欠損症の報告は少ない.心房中隔欠損症患者の2.3%に家族内発生が見られたという報告もある.本症には,(1)心房中隔欠損症単独家系,(2)房室ブロックを伴う心房中隔欠損症の家系,(3)他の疾患や奇形を伴う家系があり,本例は(2)と考えられる.家族性心房中隔欠損症の発生原因として,常染色体優性遺伝,劣性遺伝の報告や遺伝的因子に環境的因子が関連するという報告がある.

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