2001 年 33 巻 Supplement3 号 p. 30-34
症例は70歳男性.10年前に下壁心筋梗塞の既往.今回狭心症の再発に対し近医で冠動脈造影を含む心臓カテーテル検査を施行,その後から腎機能低下が出現したため一時的人工透析の後,当科へ入院.入院後,両側足背動脈を触知するにもかかわらず両側先端に紫斑を認め,好酸球増多と合わせてコレステロール塞栓症を疑い,腎機能障害と肺うっ血に対して人工透析と人工呼吸管理を行った.しかし経過中肺炎と播種性血管内凝固症候群を併発して入院1カ月目に死亡した.剖検にて大動脈は潰瘍形成を伴う高度の粥状硬化,また腎・脾・膵・胃にコレステロール塞栓を認め,コレステロール塞栓症と診断.心臓は線維化と好中球の浸潤を認めた.コレステロール塞栓症は医原性にも生じ,診断困難で予後不良の疾患であり本例はその発症・治療経過などが教訓的であったため今回報告する.