心臓
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第13回心臓性急死研究会 ペースメーカー植え込み術後に急性肺動脈血栓塞栓症を発症した洞不全症候群の1例
阿部 芳久門協 謙寺田 豊熊谷 肇佐藤 匡也熊谷 正之
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2001 年 33 巻 Supplement3 号 p. 35-39

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抄録

急性肺動脈血栓塞栓症の危険因子のひとつにペースメーカー植え込み術があげられている.ペースメーカー症例全体としては有症候性に本疾患を合併することは稀とされているが,いったん発症した場合には致死的となりうる.今回我々は,ペースメーカー植え込み術後に発症した急性肺動脈血栓塞栓症に対して血栓溶解療法を行った症例を報告する.
症例は,11年前に洞不全症候群の診断でペースメーカー植え込み術を行った65歳の女性(DDDモード,1回交換).突然の呼吸困難のため緊急受診した.心拍数110/分,チアノーゼあり.心電図では洞性頻拍とSISIISIIIパターンを,胸部X線では右肺野の透過性亢進を認めた.PaO2は45mmHg,PaCO2は25.4mmHg,SaO2は82.9%であった.直ちに行った肺動脈造影で,右肺動脈主幹部をほぼ閉塞する血栓像を認めたことから急性肺動脈血栓塞栓症と診断し,組織プラスミノーゲン・アクチベーターと抗凝固療法で治療した.約1カ月後の肺動脈造影では欠損像や血流障害はなく,左右の上下肢静脈造影ではペースメーカー植え込み側に極く軽度の欠損像を認めただけであった.ペースメーカー・リード挿入以外に血栓形成の危険因子がないことから,リードに起因した静脈血栓による塞栓症と考えた.
ペースメーカー患者では,静脈内血栓の頻度は高いが臨床的に問題となる症例は稀とされる.しかし常に塞栓子形成の危険にさらされていることに留意する必要があると考える.

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