心臓
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第13回心臓性急死研究会 心室性不整脈合併の心原性ショック例にアプリンジンが奏功した1例
宮下 豊久神谷 仁坪井 正人黒河内 典夫片桐 有一武井 学宮澤 泉
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2001 年 33 巻 Supplement3 号 p. 68-73

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抄録

症例は72歳男性.入院5日前より微熱,咽頭痛あり.入院当日,トイレで意識消失発作を起こしたが数分で回復した.その後も同様の意識消失発作を起こし当院入院となった.心電図上,完全房室ブロックと5秒以上の心停止を認めたため,一時ペーシングを施行した.翌日には38℃ 台の発熱が出現するようになった.入院8日目に心機能の低下と上室性不整脈,心室頻拍,torsades de pointesが出現,その翌日,心原性ショックとなり心室細動が出現,大動脈内バルンパンピング(IABP)を開始し,人工呼吸器の管理とした.強心剤,血管拡張剤,利尿剤を使用して心不全のコントロールはついたが,非持続性の多形性心室頻拍が頻回に出現し,心室細動の再発を認め,電気的除細動で対処した.リドカイン,メキシレチンの静脈内投与は効果がなく,アプリンジンの投与にて不整脈は完全に抑制された.その後,徐々に心機能は回復し,IABP,人工呼吸器を離脱した.安定期の冠動脈造影,左室造影,右心カテーテル検査,心筋シンチでは異常は認められなかった.各種ウイルス抗体価のペア血清において有意な上昇を認めなかったが,感冒様症状が先行し,急激な心機能低下と致死的不整脈の出現から,劇症型の急性心筋炎が考えられた.今回,IABP,塩酸アプリンジンが救命に大きく貢献したので報告する.

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