抄録
最近,われわれは持続性心房停止の症例(19歳,男)の右心房ペーシングに成功し,同時に記録したHis束心電図から電気生理学的検討を加えた.ペーシソグに対して心房は通常の強さの刺激電流(1~10mA)では興奮せず,その2倍以上(18mA)の電流によりはじめてペーシソグに応じた.またペーシング時の心房内伝導時間の著しい延長(130msec,正常は10~50msec)などから心房の著しい興奮性低下と心房内ブロックの存在が考えられた.さらに房室結節内伝導時間の延長(160msec,正常は50~125msec)があり,房室結節にも伝導障害がおよんでいた.さらにoverdrive suppression後のrecoverytime(自動能回復時間)の著しい延長(7秒,正常は1.5秒以下)があり,心臓自動能低下も認められた.かくて,その発症年齢が若い(11歳)ことも考え合わせ,心房にびまん性の変性病変をもたらす先天性疾患をその基礎疾患として推定したが,心外膜・皮膚・直腸生検で,それを証明することはできなかった.