左冠状動脈洞から発生した mycotic aneurysm の症例は本邦ではその報告をみない.われわれは最近,その2剖検例を経験したので,報告し,合せて mycotic aneurysmの発生頻度,発生部位,発生機序,外科治療などについて文献的考察をつけ加えた.症例1は52歳の男性で,約3年前に大動脈弁閉鎖不全症と診断されて以来,胸部圧迫感と呼吸困難発作を有していた.発症時期は不明であるが,37~38℃ の発熱があり,心内膜炎を考え,抗生剤を大量投与したが,胸痛発作持続と心不全のため,大動脈弁置換術を施行した.左冠状動脈洞より発生した動脈瘤が発見された.症例2は42歳男性で,咳蹴および発熱を主訴として入院,入院時,血圧118/40,心胸郭比60%,大動派弁狭窄兼閉鎖不全症に心内膜炎合併例と考え,抗生剤,強心剤,利尿剤により軽快,大動派造影上,基部に動脈瘤陰影をみた.後日心不全にて死亡し,左冠状動脈洞から発生した動脈瘤を確認した.
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