1975 年 7 巻 3 号 p. 357-361
本症例は,僧帽弁閉鎖不全症の単独疾患として診断され,手術により人工弁置換を行なったが,摘出弁の病理組織学的所見では,酸性ムコ多糖類沈着によるムチン様変性がみられ,心筋には弾力性線維の増量なくfibroelastosisの所見を見出さず,Marfan's症候群の全身的所見も全く認められない点で,floppy valve syndromeの症例ということが出来る.
患者は5歳,男子,NYHA臨床重症度は4度で,肺動脈圧70/36mmHgであった.手術所見では,僧帽弁全体の萎縮が強く弁の修復が困難なためにBjörk-Shiley弁(M31)を移植した.この人工弁は,成人用のsizeであるが,幼児例に使用出来た点で注目される.術後は血栓防止のためペルサソチソを長期に投与し良好である.