心臓
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症例 肺癌の転移による収縮性心包炎の1剖検例
武藤 紀男樋熊 紀雄田村 康二深瀬 真之
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キーワード: 肺癌, 収縮性心包炎
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1975 年 7 巻 5 号 p. 574-580

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抄録
症例は40歳の男子で,死亡7年前に右肺に異常陰影を発見され,肺結核として治療を受けた.当時無症状で,喀疾の結核菌は陰性だった.約5年後,左前胸部の痺痛発作があり,心タンポナーデの状態で入院した.
心電図はlow voltage,II,III,aVFでP波増高,全誘導でT波平低をみた.心包液の細胞診では,腫瘍細胞は陽性ないし陰性と一定しなかった.入院1年後,呼吸困難,咳〓が強まり,心陰影の縮小がみられた.
右心カテーテル法所見では,心内圧は呼吸性変動が著しく,肺動脈楔入圧は吸気で2/-2mmHg,右室の拡張末期は16mmHgであった.右室内圧曲線は,拡張早期dipとそれに続く平坦部の波型を示した.
その後症状は増悪の一途をたどり,心包炎をおこしてから1年4カ月で死亡した.剖検では,原発巣は右肺S3の瘢痕癌であり組織像は腺癌であった.心外膜は腫瘍転移のため硬く肥厚し,転移は一部心筋に及んでいた.
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