食品衛生学雑誌
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ヒトiPS細胞由来心筋細胞に対するカビ毒シトレオビリジンの電気生理学的影響
内山 陽介山崎 大樹小林 直樹諫田 泰成小西 良子
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2022 年 63 巻 6 号 p. 210-217

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抄録

シトレオビリジン(CTV)は,Penicillium citreonigrumを含むさまざまな真菌によって産生されるカビ毒である.CTVは神経毒性を特徴としているが,心臓に悪影響を与える可能性のある衝心脚気やケシャン病との関連が疑われている.in vivoおよびin vitroで実験動物の心臓および心筋細胞におけるCTVの影響が報告されているが,ヒトの心筋細胞に対するCTVの影響はまだ完全には理解されていない.本研究では,ヒトの心臓に対するCTVの直接的な影響を,ヒトiPS細胞由来心筋細胞(hiPSC-CMs)を使用した多電極アレイ(MEA)によって検討した.MEAの結果は,30 μmol/LのCTVの直接曝露がhiPSC-CMsの拍動を止めたこと,Field potential durationおよび1st peak amplitudeは10 μmol/LのCTVで短縮されたことを明らかにした.hiPSC-CMsの拍動停止前に,スパイク間の間隔の長さは2倍から4倍に変化していた.これらの結果は,CTVがヒト心筋細胞の電気生理学的活性に直接影響を及ぼしたことを示唆している.この研究は,カビ毒に関連する食品の安全性を確保するためのCTVのヒトへの直接的影響に対するリスク分析に貢献することが期待できる.

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© 2022 公益社団法人 日本食品衛生学会
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