食品衛生学雑誌
Online ISSN : 1882-1006
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63 巻, 6 号
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報文
  • 小林 麻紀, 酒井 奈穂子, 大町 勇貴, 森田 有香, 根本 了, 大塚 健治
    2022 年 63 巻 6 号 p. 195-201
    発行日: 2022/12/25
    公開日: 2022/12/28
    ジャーナル フリー

    畜産物中クロロタロニル代謝物Iの分析法について検討を行った.代謝物Iは試料からアセトンで抽出し,アセトニトリル-ヘキサン分配で脱脂後,エチレンジアミン-N-プロピルシリル化シリカゲル(PSA)およびシリカゲルミニカラム(SI)で精製し,LC-MS/MSで測定を行い,絶対検量線法で定量した.

    5品目の畜産物(牛の筋肉,牛の脂肪,牛の肝臓,牛乳,鶏の卵)を対象に残留基準値濃度または一律基準値濃度(0.01 ppm)における添加回収試験を行った結果,真度(n=5)は97.1~102.9%,併行精度は1.4~6.8%と良好であり,定量限界は0.01 mg/kgであった.

  • 神山 和夫, 笹子 浩史, 東 洋平, 市川 博野, 名兒耶 文子, 平尾 宜司
    2022 年 63 巻 6 号 p. 202-209
    発行日: 2022/12/25
    公開日: 2022/12/28
    ジャーナル フリー

    HPLC-UVおよび1H-NMRの組合せに基づく相対モル感度(RMS)法を利用して,ウコン(Curcuma longa)含有食品の機能性成分であるビサクロン(BC)およびデヒドロジンゲロン(DZ)の新規定量法を開発した.4-ヒドロキシ安息香酸エチル(HBE)を内標準物質としたBC/HBE,DZ/HBEのRMSは,それぞれ1.66,2.55であった.市販の飲料14製品を分析した結果,BC,DZとも,RMS法による含量と絶対検量線法による含量は高い相関を示した.市販の飲料1製品および錠剤1製品について,4試験室による室間共同試験を実施した結果,試験室内の相対標準偏差RSDrは0.7~1.7%,試験室間の相対標準偏差RSDRは2.0~7.3%であった.RMS法は,標準物質の入手が難しいBCやDZのような測定物質を,日常的には入手しやすい内部標準で定量できる分析法である.本RMS法は,ウコンを含有する食品の品質管理に適用されることが期待される.

ノート
  • 内山 陽介, 山崎 大樹, 小林 直樹, 諫田 泰成, 小西 良子
    2022 年 63 巻 6 号 p. 210-217
    発行日: 2022/12/25
    公開日: 2022/12/28
    ジャーナル フリー

    シトレオビリジン(CTV)は,Penicillium citreonigrumを含むさまざまな真菌によって産生されるカビ毒である.CTVは神経毒性を特徴としているが,心臓に悪影響を与える可能性のある衝心脚気やケシャン病との関連が疑われている.in vivoおよびin vitroで実験動物の心臓および心筋細胞におけるCTVの影響が報告されているが,ヒトの心筋細胞に対するCTVの影響はまだ完全には理解されていない.本研究では,ヒトの心臓に対するCTVの直接的な影響を,ヒトiPS細胞由来心筋細胞(hiPSC-CMs)を使用した多電極アレイ(MEA)によって検討した.MEAの結果は,30 μmol/LのCTVの直接曝露がhiPSC-CMsの拍動を止めたこと,Field potential durationおよび1st peak amplitudeは10 μmol/LのCTVで短縮されたことを明らかにした.hiPSC-CMsの拍動停止前に,スパイク間の間隔の長さは2倍から4倍に変化していた.これらの結果は,CTVがヒト心筋細胞の電気生理学的活性に直接影響を及ぼしたことを示唆している.この研究は,カビ毒に関連する食品の安全性を確保するためのCTVのヒトへの直接的影響に対するリスク分析に貢献することが期待できる.

  • 佐藤 由佳子, 出羽 智子, 鈴木 康司, 永富 康司, 曲渕 哲朗, 宮本 靖久
    2022 年 63 巻 6 号 p. 218-224
    発行日: 2022/12/25
    公開日: 2022/12/28
    ジャーナル フリー
    電子付録

    生物系異物の起源種判別を行う目的でプロテオミクス解析技術を用いた判別法を開発した.すなわち,異物から抽出したタンパク質のトリプシン消化物のアミノ酸配列を高分解能LC-MSで決定し,そのアミノ酸配列を公開タンパク質データベースと照合して,異物の起源種を判定するものである.食肉(ウシ,ブタ,ニワトリ)および卵(ニワトリ,ウズラ)を模擬異物として供試した結果,トリプシン消化物から得られたペプチドからそれぞれの種特異的アミノ酸配列が確認でき,種判別は可能であることが示唆された.またDNA解析では判別が困難とされるレトルト加熱履歴のある試料でも適用可能であることが示唆された.本法は異物解析においてDNA解析を補完する技術として有用であると考えられる.

調査・資料
  • 難波 順子, 浦山 豊弘, 金子 英史, 佐藤 淳, 藤本 佳恵, 繁田 典子
    2022 年 63 巻 6 号 p. 225-230
    発行日: 2022/12/25
    公開日: 2022/12/28
    ジャーナル フリー

    食品残品が入手できないふぐ食中毒事例において,LC-MS/MSを用いた分析法により患者のおう吐物および尿からテトロドトキシン(TTX)を検出した.これらの試料の分析において,当初は保持時間がTTX標準品と一致せず,測定値に希釈倍率を乗じた値が一定にならなかったが,TTX標準品の保持時間との一致を目安におう吐物では10倍希釈,尿では100倍から200倍希釈することで定量性良く分析することが可能となった.また,尿を用いた分析法の追加検討により,TTXの濃度が低くピークの同定が困難でも希釈によりマトリックスの影響を低減することで同定が可能となることがあること,また,マトリックスの影響がある希釈率で測定する場合はマトリックスを添加したTTX標準品による定量が有効であることが示唆された.

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