食品衛生学雑誌
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サルによる塩化メチル水銀の長期毒性研究
川崎 靖池田 良雄山本 達也池田 和彦
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1986 年 27 巻 5 号 p. 528-552_1

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抄録

サルに塩化メチル水銀の0 (C), 0.01 (L1), 0.03 (L2), 0.1 (H1) 及び0.3 (H2) mg/kg/day (Hgとして)を52か月間摂取させた. H2及びH1群は平均62及び181日で神経症状の発現を認め, その間に摂取した水銀量は15.9及び15.3mg/kgであった. 一方L2及びL1群は神経症状の発現を認めず, 52か月間の水銀摂取量は39.6及び13.2mg/kgであった. 毛中及び血中水銀量は両H群で神経症状発現時に高値を示し, 両L群では30~36か月で最高に達した後, 減少傾向を示した. 臓器中の水銀量は両H群の大脳で高値を示し, 組織学的には大脳と腎臓に顕著な障害を認めた. この結果は, サルにおける塩化メチル水銀の神経作用の無作用量がL2とH1の非常に狭い範囲にあることを示唆した. この無作用量は我が国の「魚介類中の暫定的規制値」及びWHOにおける「一日摂取許容量」の決定に利用された.

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