2018 年 39 巻 1 号 p. 56-63
小児では転倒などにより箸や歯ブラシなどの異物による口腔外傷が多く見られる。稀に異物が頚髄,頭蓋内などの深部に刺入するものの発見が遅れることや,異物が刺入しなくても気腫や深頸部感染症を生じること,時に遅発性の内頸動脈閉塞を合併することがある。したがって,小児口腔外傷は患者家族への十分な説明と厳重な経過観察が必要であり,注意を要する疾患である。
口腔より箸が刺入し,頭頸部深部に達して異物として残存した小児2症例を経験した。1例は異物が上咽頭粘膜下,斜台前方の頭長筋内まで達して後咽頭間隙に蜂巣炎を併発しており,内視鏡を用いて経鼻的に異物を摘出した。もう1例は異物が頸動脈間隙に達して,周囲の間隙に気腫を生じており,外切開により異物を摘出した。両症例とも術後,遅発性の内頸動脈閉塞などの合併症は認められなかった。
自験例と小児の口腔異物症例について,若干の文献的考察を加えて報告する。