2018 年 39 巻 3 号 p. 243-249
咳嗽は小児科の外来診療に於いて,遭遇する機会が多い症状の一つである。しかし,生活環境や年齢により病原微生物の種類や考慮すべき疾患分布が異なること,咳を誘発・増悪させる原因が一つだけでなく重複することもありその診断は容易ではない。また小児では,呼吸器症状が急速に悪化し迅速な対応が必要で,速やかに診断を確定して的確な治療を開始しなければならないこともある。そのために小児を診療する医師は,普段より小児の呼吸生理や原因疾患の種類・診断法を熟知している必要がある。小児の咳嗽診療ガイドラインが作成され診療の指針は示されるようになってきた。しかし,遷延する咳や繰り返す咳には非常に稀な疾患もあり,検査や診断・治療に於いて耳鼻科医と協力して診療に当たった方が良い症例も多い。我が国の臨床的特徴や小児の呼吸特性を十分に理解し,小児科医と耳鼻科医が協力して咳嗽診療に望む必要がある。