抄録
室内空気中におけるアセトアルデヒドの発生源および発生機構については不明な点が多く, これまで明らかとなっていなかった発生源が次々と見出されている。一方で, 家庭用冷蔵庫内には食品由来のカルボニル化合物の存在が見いだされ, さらに冷蔵庫と設置空間との間には空気の交換が行われていることが報告されている。本研究では家庭用冷蔵庫内のアセトアルデヒド濃度の実態調査結果および冷蔵庫の漏気回数などをもとに, 冷蔵庫からの当該物質の発生が居住空間の室内濃度にどの程度寄与するのかをモンテカルロ法により検討した。その結果, 嗅覚閾値(2.7 g/m3)に対しては, 単身世帯を想定した設定条件では10%に満たない寄与率であったが, 一般世帯(二人以上で構成される世帯)を想定した推定条件では25%に相当し, 試行回数10,000回のうち, 嗅覚閾値を上回るケースが6.4%あった。一方で家庭用冷蔵庫由来のアセトアルデヒドは室内濃度指針値(48 g/m3)に対しては0.25~1.4%程度の寄与率に過ぎなかった。以上のことから, 家庭用冷蔵庫から発生するアセトアルデヒドのみでは室内の臭気や室内濃度指針値への寄与率は高いとは言えないものの, 冷蔵庫は生活と密接に関係しているため, 室内における他の発生源のように容易に撤去することができないという性質も持ち合わせている。したがって, 家庭用冷蔵庫が食品の保管場所のみならず, ガス状化学物質の発生源としての一面を有することにも着目すべきである。