抄録
高齢者介護施設が多剤耐性菌拡散に対して大きな役割を果たしているとする意見がある一方で, 高齢者介護施設での耐性菌分離及びそのリスクファクターを明らかにした報告はほとんど見当たらない。今回, 個室での生活を主とするユニット型の特別養護老人ホーム(施設A)において多剤耐性菌保菌の実態調査および対象者の属性から保菌リスク因子の解析を行った。同意の取れた利用者28名を対象に調査を行い, 10名(35.7%)から何らかの耐性菌が検出され, そのうちMethicillin-resistant Staphylococcus aureus(MRSA)の検出は1名(3.6%), Extended-Spectrum β-lactamase(ESBL)選択培地に発育したブドウ糖非発酵菌類の検出は2名(7.1%)であった。介護度4以上の利用者の保菌率(53.8%)は介護度3以下の利用者の保菌率(20.0%)よりも高率であったが, 統計的な有意差は認められなかった(p=0.06:chi-square test)。また, 日常生活介助の有無別による保菌率の比較では食事介助, 排泄介助, 移乗介助共に介助有の利用者の保菌率が高かったが, いずれも統計的な有意差は認めなかった。 今回の調査では有意差のあるリスク因子を見いだせなかったが, 今後, 対象施設・対象者数を増やし, さらに, 施設特性を考慮した調査を行う必要があると考えた。