抄録
居住空間の空気質改善に家庭用空気清浄機が利用されている。 集じん, 脱臭, 除菌などの機能の中心となるのが空気中に浮遊している微粒子の除去技術である。 販売されている機器の大半はフィルタろ過式である。 ろ過の捕集機構は, 慣性力, さえぎり, 拡散力, 重力, 静電気力の作用によって行われる。 慣性力などの機械的捕集は大粒径に, 静電気捕集は小粒径に有利である。 家庭用空気清浄機では圧損を低くしながら微小粒子を捕集するため, あらかじめ繊維を帯電させたエレクトレットフィルタが用いられている。 しかし繊維の帯電は燃焼生成粒子などを捕集した場合に消失してしまう。 これを持続させるために繊維表面の改質や, 摩擦による再帯電などの改善が試みられている。 一方で電力供給により静電気力を発生させる電気集じん技術がある。 室内空気を循環させて清浄化する場合には処理風量が性能に大きく影響するため, 送風抵抗の少ない電気集じん装置は, この点で有利である。 電気集じんは放電による電力消費とオゾン発生というフィルタにない側面があり, これらを改善するために誘導帯電やグラディエント力による荷電方式, 被覆接地電極の絶縁破壊で発生させる高密度パルスイオン荷電方式などが研究されている。 本稿では微粒子除去技術の全体像を概観したうえで, 電気集じん技術の概要および研究動向について述べる。