理科教育学研究
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原著論文
理科の学習場面における自己効力感,学習方略,学業成績に関する基礎的研究
鈴木 誠
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1999 年 40 巻 1 号 p. 11-23

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抄録

理科の学習場面における自己効力感,学習方略,学業成績の関係を分析するために,理科教育用の学習方略測定尺度及び,理科教育用自己効力感測定尺度縮小版,認知的方略のメタ認知測定尺度の改良版,及び社会的関係性測定尺度を作成し,中学生及び高校生に調査を実施した。その結果,次のことが明らかになった。1 理科の学習における「精緻化方略」や「体制化方略」は,自己効力感の中心概念である「統制感」,手段保有感の「努力」や「能力」と相関がある。また,認知的方略のメタ認知の「自己評価」や「自己制御」とも相関があることから,理科の学習方略は生徒の自己効力感を構成する重要な概念の一つと考えられる。2 理科の学習における社会的関係性の「周囲の期待」は,「統制感」や手段保有感の「努力」と相関がある。また手段保有感の「教師」は,全ての構成概念と相関がある。3 高校生において,理科の学業成績が高い生徒は,自己効力感の中心概念である手段保有感の「努力」の得点平均値が高い。また,自己制御の「課題解決の計画」や「課題解決の情報処埋」といったモニタリング能力に富み,「精緻化方略」や「体制化方略」等の学習方略の獲得もできている。これらのことは,自己効力感を高める学習指導を進める上で,重要な示唆を含むものである。

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© 1999 日本理科教育学会
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