2009 年 50 巻 2 号 p. 107-119
認知過程において重要な役割を担っているメタ認知に関する研究が,協同的な学習場面においても行われるようになっている。協同的な学習場面においてメタ認知を育成する手法を検討するためには,学習者間のやり取りにおけるメタ認知の様相について,詳細な研究を行う必要があると考えた。本研究では,授業者がメタ認知の育成を意図的には行っていない協同的な理科学習場面を対象に, どのような状況において生徒のメタ認知が活性化しているのかについて明らかにすることを目的とした。中学1年生を対象に,協同的な理科学習場面における発話を記録し,メタ認知的モニタリングやコントロールが機能した結果としてのメタ認知的発話を抽出した。そして,メタ認知が機能する状況を議論の構造と関連付けて検討するために,丸野らの研究を参考にデイスカッションのフェーズを特定し,分析に用いた。その結果,非論証フェーズよりも論証フェーズにおいてメタ認知がよく機能していることが明らかとなった。また,論証フェーズに移行するきっかけとして. 1) 異なる考えの主張2) 友達からの要請(「正当化の要請」や「フィードバックの要請」), 3) 他者のメ夕認知的発話(矛盾点を指摘した発言),4) 文字化,という4つの要因を抽出した。