本論文では,川喜田二郎が問題解決のプロセスのモデルとして提案したW型問題解決モデルを応用した理科教育用のW型問題解決モデルとその学習モデルを提案した。そして,そのモデルに基づいて,科学的リテラシーを育成するための理科教育のあり方について体験から思考の段階までを総合的に考察し,その内容と方法について提案を行った。以下にその概要を述べる。1. 川喜田二郎のW型問題解決モデルを応用して,理科教育のためのW型問題解決モデルの「問題提起→探検→観察→発見→仮説の設定→推論→実験計画→観察・実験→検証→一般化→日常生活へ応用」の過程を科学的リテラシー育成の観点から一連の科学的探究のプロセスと対応させ,従前の問題解決能力育成に関する学習モデルの問題点を述べた。特に問題点の1つとして,野外観察が体系的に指導されてこなかったことを述べるとともに,子どもの問題解決能力を育成する上で配慮すべき探究の過程や観点について,モデルに基づき説明した。2. PISA2006調査の中で指摘されている科学的リテラシーを育成する3つの科学的能力「科学的な疑間を認識すること」,「科学的な証拠を用いること」,「現象を科学的に説明すること」のうち, 日本の理科教育の課題となっている「科学的な疑問を認識すること」や「現象を科学的に説明すること」を, W型問題解決モデルに位置付けて考察した。3. 子どもの科学的リテラシーを育成するための方策として, W型問題解決モデルをさらに5つの学習モデルに小類型化するとともにそれぞれについて具体的な事例を提案した。
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