抄録
本論文では, 特集号の「本学会の会員が取り組んできた理科授業研究に関する最先端の知見を集約するとともに, それらを俯瞰し, 理科授業研究に関する新たな議論の喚起や研究のさらなる推進に寄与する機会の提供をめざしている」という趣旨に鑑み, まず, 筆者らが主に取り組んできた「研究テーマの設定」「授業の開発」「授業の効果の実証」の3点について述べた。そして, 筆者らの理科授業研究の知見を現場の授業改善にどのように生かしているのか, 2年間の公立中学校での事例を紹介した。この事例の中では, 2年間携わった3人の教員のコメントから, 指導案検討会・2回のセミナー・授業研究会などを通して, 筆者らの理科授業研究の知見が, 指導計画を支える理論, 教員の成長を手助けする指摘, 小中のつながり, 教材・授業開発への示唆, 指導技術に生かされていたことが伺えた。さらに, 今後の展開について, 現場の授業改善に資する理科授業研究の推進, 理科授業研究の知見を世界中へ発信することで, 中学校理科教員にも自信を持って理科授業が展開できるように支援すると述べた。