理科教育学研究
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56 巻 , 1 号
特集号  理科授業研究の今を問う
選択された号の論文の11件中1~11を表示しています
巻頭言
原著論文
  • 神山 真一, 山本 智一, 山口 悦司, 坂本 美紀, 村津 啓太, 稲垣 成哲
    2015 年 56 巻 1 号 p. 3-16
    発行日: 2015/07/18
    公開日: 2015/09/30
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, 複数の理由付けを利用するアーギュメント構成能力の育成を目指した教授方略のデザイン要素を開発し, 「植物の養分」を題材とした小学校第6学年の授業を通して, その有効性を検証することである。デザイン要素とは, 教授方略を授業に反映させるためのガイドを指す。本研究では, 単元の準備段階における3つの教授方略を授業に反映させるために, 3つのデザイン要素を開発した。また, 単元の実施段階における7つの教授方略を授業に反映させるために, 7つのデザイン要素を開発した。単元は, 小学校第6学年理科「植物の養分」であった。本単元で開発したデザイン要素を導入した単元を通して児童のアーギュメント構成能力が向上したのかを評価するために, 単元内容に関するアーギュメント評価課題と既習内容に関するアーギュメント評価課題を実施した。前者の結果, 80%以上の児童が複数の理由付けを利用してアーギュメントを構成できていた。また, 後者の結果, 単元前に記述したアーギュメントよりも単元後に記述したアーギュメントの方が複数の理由付けを利用できていた。これらのことから, 本研究で開発したデザイン要素が, 複数の理由付けを利用するアーギュメント構成能力の向上に有効であることが示唆された。
  • ~カリキュラムマネジメントに基づく理科授業研究モデルの構想~
    後藤 顕一, 松原 憲治
    2015 年 56 巻 1 号 p. 17-32
    発行日: 2015/07/18
    公開日: 2015/09/30
    ジャーナル フリー
    社会の変化に伴い, 求められる資質・能力 1)の育成が一層重視され, その育成を目指す教育改革が進められている(例えば, 文部科学省, 2014a)。そこで, 理科授業研究において, 資質・能力の育成を目指す教育改革に対応した学習指導について多面的な視点から整理を試みた。国内外の調査では資質・能力の育成の柱の一つである「子供の主体的な学びを引き出す学習を促進させていく」ことに課題があることがわかっている。その改善のためには, 子供の主体的な学びの実現に向けて, 理科を学ぶ目的を意識するとともに, 「内容と学習活動と資質・能力」を一体としてつないでいき, 自らの学びを振り返ることができるようにすることや, 子供の学習意欲を引き出せるような教師の指導に向けて, 主体的・協働的な学びを促進し, それらを含め学習評価に結び付けていくようにすることが求められる。さらに, 理科授業研究において, カリキュラムマネジメントに基づき, 授業実践や学習評価につなげ, 検証・修正を重ね, 改善を図り, 次の学びや指導につなげ続ける仕組みを構築することが求められる。そこで, 資質・能力の育成のためにカリキュラムマネジメントに基づく理科授業研究モデルの構築に向けて, 子供の学び, 教師の指導といった二つの視点を置きながら, 内容・学習指導と評価の一体化について検討した。
  • ~フィードバックが機能する四つのレベルを意識した授業デザイン~
    長沼 武志, 森本 信也
    2015 年 56 巻 1 号 p. 33-45
    発行日: 2015/07/18
    公開日: 2015/09/30
    ジャーナル フリー
    本研究は, 自己調節的な理科学習に取り組むための教授方略として, 形成的アセスメントによるフィードバック機能の効果を検証することを目的とした。そこで, 形成的アセスメントによるフィードアップ, フィードバック, フィードフォワードが機能する, タスクレベル, プロセスレベル, 自己調整レベル, 自己レベルの四つのレベルを意識した, 理科の授業デザインを考案した。その結果, フィードバックが, 子どもの自律的な問題解決, メタ認知や自己評価を促し, 自己調整的な理科授業を具現化すると共に, 科学概念の構築に寄与することが明らかとなった。
  • 中山 迅, 猿田 祐嗣
    2015 年 56 巻 1 号 p. 47-58
    発行日: 2015/07/18
    公開日: 2015/09/30
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, 日本の小学校理科教科書において, 問題解決活動の各段階で設定される問いの傾向を見いだすことである。これは, 授業研究への一つの視座を提示することを意図するものである。そのため, 小学校理科教科書に書かれている「問い」を抽出してデータセットを作成し, 問いの種類と場面によるクロス集計を行って, その結果を考察した。分析から, (1)問題解決において「背景」「問題」「結果」「考察」の場面に多くの問いが設定されている, (2)「どんな」「どのように」の問いが多く, とりわけ「生命」の領域に多い, (3)「はい・いいえ」で答える問いが「粒子」の領域で多く用いられる, (4)「方法」場面の問いは第5学年で多く設定される, などの傾向が明らかになり, 内容領域や場面に応じた適切な問いの設定のための示唆が得られた。
  • ―対話的な学習を通した指導の試み―
    松本 朱実, 馬場 敦義, 森本 信也
    2015 年 56 巻 1 号 p. 59-74
    発行日: 2015/07/18
    公開日: 2015/09/30
    ジャーナル フリー
    学校と動物園を連携させた理科教育の効果を, 指導と評価方法と共に示すことを目的とした。構成主義の教授学習論に基づき, 指導者と子ども相互の対話的な学習を通した授業研究を, 学校と動物園において継続して実施し, 子どもの生命に関わる科学概念構築の様態を検証した。その結果, 対話を通じて子どもの思考や表現を評価する足場作りが子どもの概念構築を支援し, 子どもが生命概念を複合的に関連付けて拡充させた。
  • ―中学校理科「物質の成り立ち」の単元を事例として―
    和田 一郎, 宮村 連理, 澤田 大明, 森本 信也
    2015 年 56 巻 1 号 p. 75-92
    発行日: 2015/07/18
    公開日: 2015/09/30
    ジャーナル フリー
    近年, 理科授業において言語活動の充実が志向され, そのための指導として結果の考察の充実および他者との関わりを通じての自分なりの思考・表現活動の活性化が要請されている。理科における言語活動としての結果の考察では, 言葉や記号に加え, グラフ, 画像やイメージなど視覚的な要素で捉え, それを表現する活動, すなわち「視覚化」の能力の育成が不可欠である。しかし, 現在の中学校の理科学習においてこの点に課題を有する子どもが多い。そこで本研究では, まず理科学習における視覚化の意味について検討した。その上で, この視覚化過程を他者との相互作用を通じて俯瞰的に捉える「メタ視覚化」の概念に着目し, これを表象ネットワークとの関連から明確化することで, 子どもの自分なりの思考・表現活動の実態を捉える理論モデルを構築した。そして, そのモデルの有用性を中学校の理科授業を事例に検証することで, 教育課題の解決に資する知見の導出を志向した。結果として, 本研究で提案するモデルによって, 子どもが他者との相互作用過程を通じて, 新規の情報を俯瞰的に捉え, 自己のメタ視覚化を再構成させていく様態を捉えることが可能となった。こうした他者のイメージ図などの視覚化要素との相互作用を通じて, それを俯瞰的に捉えて内的に視覚化し, これに言葉や記号を有機的に結合させる過程を通じて, 理科における言語活動としての結果の考察は充実されることが明らかとなった。
資料論文
  • ―公開授業研究会へ向けての2年間の取り組みを例にして―
    山下 修一, 勝田 紀仁
    2015 年 56 巻 1 号 p. 93-103
    発行日: 2015/07/18
    公開日: 2015/09/30
    ジャーナル フリー
    本論文では, 特集号の「本学会の会員が取り組んできた理科授業研究に関する最先端の知見を集約するとともに, それらを俯瞰し, 理科授業研究に関する新たな議論の喚起や研究のさらなる推進に寄与する機会の提供をめざしている」という趣旨に鑑み, まず, 筆者らが主に取り組んできた「研究テーマの設定」「授業の開発」「授業の効果の実証」の3点について述べた。そして, 筆者らの理科授業研究の知見を現場の授業改善にどのように生かしているのか, 2年間の公立中学校での事例を紹介した。この事例の中では, 2年間携わった3人の教員のコメントから, 指導案検討会・2回のセミナー・授業研究会などを通して, 筆者らの理科授業研究の知見が, 指導計画を支える理論, 教員の成長を手助けする指摘, 小中のつながり, 教材・授業開発への示唆, 指導技術に生かされていたことが伺えた。さらに, 今後の展開について, 現場の授業改善に資する理科授業研究の推進, 理科授業研究の知見を世界中へ発信することで, 中学校理科教員にも自信を持って理科授業が展開できるように支援すると述べた。
  • ―自然事象に関わる因果関係の観点から―
    山田 貴之, 田代 直幸, 田中 保樹, 小林 辰至
    2015 年 56 巻 1 号 p. 105-122
    発行日: 2015/07/18
    公開日: 2015/09/30
    ジャーナル フリー
    “The Four Question Strategy(4QS)”は, 4つの質問により仮説を設定させる指導方法である。本研究では, 長谷川らの観察・実験等の類型に基づいて, 小・中学校の理科教科書(X社)に掲載されている全ての観察・実験等について, 因果関係の有無の観点から検討を行い, 4QSの適用が可能かどうかを明確にするとともに, 適用の仕方を具体的に示すことを目的とした。
    その結果, 長谷川らの観察・実験等の類型は, 4QSへの適用という観点から見ると, いずれの校種においても3つのカテゴリーに集約することができた。そして, 4QSの適用は, 第5学年以降における条件の制御を伴う実験において, 最も効果が期待できることが明確になった。また, 因果関係を有する事象であっても, 条件の制御を伴わない実験や, 因果関係を想定していない事物の観察においては, 4QSの適用は適切でないことも明確になった。
    本研究で得られた知見は, 問題解決の能力や科学的な探究の能力を育成する理科授業を構想する際の基礎資料となることが期待される。
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