2019 年 59 巻 3 号 p. 379-391
本研究では,まず,教科書に示された「月と太陽」について記載事項を整理した。その結果,児童が野外観察を行う日数は2~3日分と少なく,モデル実験で調べる日数に対応していないこと,また,モデル実験が,データにもとづかず,曖昧に行われていることが明らかになった。このことが,教科書に掲載されているモデル実験の解釈に誤解を生じさせることなり,また,帰納的な授業ができにくいといった課題も生じさせていた。そこで,タブレットPCを使った疑似観察を授業に導入し,授業改善を図った。本研究の目的は,「野外観察後,タブレットPCを使って疑似観察を行い,その結果をもとにモデル実験を行う」という一連の授業を実践し,児童の観察の状況,また,理解の程度をもとに,その有効性を検証することであった。調査・分析した結果,明らかになったことは次の2つである。①野外観察のみでは帰納的な授業はできにくい状況であったが,タブレットPCを使った疑似観察でそれが可能になり,疑似観察の結果をもとに調べるモデル実験を実施することができた。②タブレットPCを使った疑似観察,また,モデル実験が,それぞれ児童の理解の程度を高めることに寄与したことが示唆された。