本研究の目的は,「共通」な祖先から現存の「多様」な生物が出現してきたのは「進化」の結果であること,加えて,その「進化」のしくみは生存に有利な「遺伝的変異」が親から子へと伝わること,この2つを中学生が見いだして理解することである。平成29年改訂の中学校学習指導要領では「生物の種類の多様性と進化」が第2学年から第3学年に移行し,「遺伝の規則性と遺伝子」の学習後に扱うように改訂された。「進化」と「遺伝」は生物学史上における対立概念であり,後に統合を果たすものである(現代的総合)。しかしながら,この2つの対立概念が統合を果たした経緯について扱うことは,平成29年改訂の学習指導要領には明記されていない。そこで,本研究では「進化」と「遺伝」を統合した単元開発を行った。その学習計画には,「遺伝的変異による多様化」によって進化が起こることを理解させるため,ワシントン大学で開発された「Pasta Genetics」実習を組み込んだ。質問紙調査などの分析から,本研究における単元開発が科学的進化・遺伝概念の理解に有効であることが明らかになった。