理科教育学研究
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原著論文
画像に言葉を組み込んだ視覚教材
―「岩石」と「鉱物」の関係性の理解につなげる小学校での実践授業の試みから―
多賀 優
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2020 年 60 巻 3 号 p. 579-588

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抄録

岩石や鉱物を以前に学習しているにも関わらず,多くの大学生が岩石と鉱物を区別できていないことが明らかにされている。これは小・中・高等学校の授業で岩石と鉱物の科学的概念を身につけ,両者の違いについての理解を深めることが十分でないことを示している。このように現状での学校教育において完成されない科学的概念構築を補う教授法や教材の開発は喫緊の課題である。そこで今回,小学校6年生の34人に岩石と鉱物の関連を理解させる言葉を組み込んだ紙製の視覚教材を用いて授業実践を行い,その中での岩石と鉱物の違いにつながる理解の変容や仕組みについて明らかにすることでこの視覚教材の有効性について検証した。小学校6年生の2クラス(実験群の18人と統制群の16人)で火山の単元の実践授業を行い,火山灰の観察を行った。この授業前後にコンセプトマップによる概念調査を実施した。両クラスの授業では火山の噴火とそこから出てくる火山灰の説明を行い,実験群でのみ紙製の視覚教材を提示して,岩石は鉱物の集まりであることを説明した。コンセプトマップの結果から,統制群と比較して実験群では「鉱物が集まると岩石となる」という概念系が有意に増加していた。これらのことから小学生に対する岩石と鉱物の関連性を示す言葉を組み込んだ紙製の視覚教材の有効性が明らかになった。

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