理科教育学研究
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60 巻 , 3 号
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原著論文
  • ―中学校第2学年「酸化銀の熱分解」の学習を事例として―
    飯田 寛志, 山内 慎也, 後藤 顕一
    2020 年 60 巻 3 号 p. 525-537
    発行日: 2020/03/30
    公開日: 2020/04/15
    ジャーナル フリー

    本研究は,資質・能力を育成する観点から,相互評価表を用いる学習活動を取り入れた中学校理科の授業を実践し,実験結果や考察に関する内容の理解について分析することにより,相互評価活動と学習内容の理解との関係について検討することを目的として行った。相互評価表を用いる学習活動とは,授業における学習課題に対する記述について,授業者が設定した評価規準を用いて学習者が自己評価と相互評価を行い,評価結果とともに学習課題に対する記述を振り返る中で,主体的に学習に取り組みながら表現力等を育成することを目的とする学習活動である。授業後に実施した調査問題の分析結果から,相互評価表を用いる学習活動は知識と知識を関連付けて学習内容を理解することについて効果があることが明らかとなった。

  • 板橋 克美
    2020 年 60 巻 3 号 p. 539-544
    発行日: 2020/03/30
    公開日: 2020/04/15
    ジャーナル フリー

    多くの中学生が持つ「運動する方向に力が働く」という力学誤概念の解消を目的としたアクティブラーニング(AL)型の授業を提案し,熊本県内の公立中学校において実施した。伝統的な教え込み型の授業を行ったクラスとAL型授業を行ったクラスの知識の定着度を比較するため,それぞれ,事前と授業の一週間後にテストを行い,結果を評価した。その結果,AL型の授業を行ったクラスでは,伝統的な教え込み型の授業に比べて,事前・事後での点数の伸びに顕著な上昇が見られ,AL型授業の有効性を確認することができた。

  • ―小学生と中学生の比較を中心として―
    雲財 寛, 山根 悠平, 西内 舞, 中村 大輝
    2020 年 60 巻 3 号 p. 545-556
    発行日: 2020/03/30
    公開日: 2020/04/15
    ジャーナル フリー

    本研究は,理科における批判的思考が知的好奇心に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。公立小学校の児童346名,公立中学校の生徒971名を対象に,五件法の質問紙調査を実施した。調査の結果,下記に示す3点を示唆する結果となった。熟慮的な思考を促すことによって,知的好奇心が高まること。熟慮的な思考を促すことによる知的好奇心への影響の大きさは,校種間で違いはないこと。中学生の場合,健全な懐疑を促すことで,知的好奇心が高まること。

  • 久保田 善彦, 中野 博幸, 小松 祐貴
    2020 年 60 巻 3 号 p. 557-568
    発行日: 2020/03/30
    公開日: 2020/04/15
    ジャーナル フリー

    本研究は,視点移動を,空間的視点取得の仮想的身体移動概念から捉え直した。仮想的身体移動とは,自分の分身を心的に作りそれを移動させることである。先行研究では,身体行為によって仮想的身体移動が促進すると考えたが,十分な成果には至らなかった。そこで本研究では,従来のシステムにアバタを表示し,仮想的身体と重ね合わせる機能を実装した。具体的には以下を追加した。地球や月の立体モデルと観察者との間にアバタを出現させる,地球の観察地点までアバタを移動させる,アバタの視点(見え)を表示する。その結果,月の満ち欠けに関する理解が向上したことから,アバタと仮想的身体とを重ね合わせることで,仮想的身体移動を伴う空間的視点取得を促進した可能性が高い。幾つかの課題も抽出できた。例えば,旧新AR群のように異なったAR教材を連続して活用することの影響は不明である。より実験的な計画による調査が必要である。また,新AR教材を活用することで,引き剥がしや仮想的身体の移動が心的に行われたかについては,今回とは異なる課題の併用,MRI等を使った脳科学からの検討,思考発話法(think aloud)やインタビューによる検討が必要になる。

  • ―平成に発生した自然災害と学習指導要領改訂等から捉えた理科教育への影響―
    佐藤 真太郎, 藤岡 達也
    2020 年 60 巻 3 号 p. 569-577
    発行日: 2020/03/30
    公開日: 2020/04/15
    ジャーナル フリー

    近年,理科教育としても頻発する自然災害に対して無視することができず,様々な取組が見られる。本稿では,平成以降の自然災害の発生を受け,理科教育界ではどのような対応がされたのかを分析し,その現状と今後の方向性を探った。その結果,以下のことが明らかになった。平成10年告示学習指導要領は,学習内容の全体的な精選により,実質的には自然現象を取扱う時間が減った。平成20年告示学習指導要領では,理科教育における自然災害の取扱いを,人間生活との関わりの中でも捉えるように拡大した。これはOECD・PISA2000年調査以降の科学的リテラシーを育成する視点の定着,国連防災世界会議やUN/DESDなどの国際的な動向が影響している。平成29年告示学習指導要領では,理科教育と防災教育との関連性に一層の充実が見られる。また,カリキュラム・マネジメント的な視点で「災害」を捉える見方が明確化された。これらの分析・考察から3つの課題が見える。一つは,理科教育の中で扱う自然災害に関連した内容が,人間生活との関連性を重視するため,従来,社会科で学習していた「災害を防ぐ社会の仕組み」などの内容と重複する部分が増え,理科と社会における自然災害の取扱いの連動性が求められる点である。二つ目は,文部科学省内において,教科を取扱う部局と学校安全(災害安全)を取扱う部局が異なっているため,教育現場において,理科や社会などの教科による学習内容と災害安全とが繋がっていない現状の改善である。三つ目は,日本の貢献が考えられる国際的な動向から国連の「持続可能な社会を築く」という目的の中で,防災教育はESDとも強い関連があり,理科教育の内容・方法を中心とした取組はSDGsとも大きく関わる。理科教育学においてもこれらの課題に取り組むことが,今後の日本国内における自然災害の防災教育を前進させるために必要である。

  • ―「岩石」と「鉱物」の関係性の理解につなげる小学校での実践授業の試みから―
    多賀 優
    2020 年 60 巻 3 号 p. 579-588
    発行日: 2020/03/30
    公開日: 2020/04/15
    ジャーナル フリー

    岩石や鉱物を以前に学習しているにも関わらず,多くの大学生が岩石と鉱物を区別できていないことが明らかにされている。これは小・中・高等学校の授業で岩石と鉱物の科学的概念を身につけ,両者の違いについての理解を深めることが十分でないことを示している。このように現状での学校教育において完成されない科学的概念構築を補う教授法や教材の開発は喫緊の課題である。そこで今回,小学校6年生の34人に岩石と鉱物の関連を理解させる言葉を組み込んだ紙製の視覚教材を用いて授業実践を行い,その中での岩石と鉱物の違いにつながる理解の変容や仕組みについて明らかにすることでこの視覚教材の有効性について検証した。小学校6年生の2クラス(実験群の18人と統制群の16人)で火山の単元の実践授業を行い,火山灰の観察を行った。この授業前後にコンセプトマップによる概念調査を実施した。両クラスの授業では火山の噴火とそこから出てくる火山灰の説明を行い,実験群でのみ紙製の視覚教材を提示して,岩石は鉱物の集まりであることを説明した。コンセプトマップの結果から,統制群と比較して実験群では「鉱物が集まると岩石となる」という概念系が有意に増加していた。これらのことから小学生に対する岩石と鉱物の関連性を示す言葉を組み込んだ紙製の視覚教材の有効性が明らかになった。

  • ―「遺伝の規則性」と「生物進化」を統合した学習計画の提案―
    名倉 昌巳, 松本 伸示
    2020 年 60 巻 3 号 p. 589-601
    発行日: 2020/03/30
    公開日: 2020/04/15
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,「共通」な祖先から現存の「多様」な生物が出現してきたのは「進化」の結果であること,加えて,その「進化」のしくみは生存に有利な「遺伝的変異」が親から子へと伝わること,この2つを中学生が見いだして理解することである。平成29年改訂の中学校学習指導要領では「生物の種類の多様性と進化」が第2学年から第3学年に移行し,「遺伝の規則性と遺伝子」の学習後に扱うように改訂された。「進化」と「遺伝」は生物学史上における対立概念であり,後に統合を果たすものである(現代的総合)。しかしながら,この2つの対立概念が統合を果たした経緯について扱うことは,平成29年改訂の学習指導要領には明記されていない。そこで,本研究では「進化」と「遺伝」を統合した単元開発を行った。その学習計画には,「遺伝的変異による多様化」によって進化が起こることを理解させるため,ワシントン大学で開発された「Pasta Genetics」実習を組み込んだ。質問紙調査などの分析から,本研究における単元開発が科学的進化・遺伝概念の理解に有効であることが明らかになった。

  • ―中学生の科学的進化概念の形成と誤概念の保持について―
    名倉 昌巳, 松本 伸示
    2020 年 60 巻 3 号 p. 603-613
    発行日: 2020/03/30
    公開日: 2020/04/15
    ジャーナル フリー

    平成29年改訂の中学校学習指導要領では「生物の種類の多様性と進化」は中学校第3学年に移行し,「遺伝の規則性と遺伝子」や「生物と環境」の単元と同じ学年で教えられるようになった。一方,「生物多様性」は(1)遺伝的多様性,(2)種多様性,(3)生態系の多様性に大別されている。このうち「生態系の多様性」の根底には「生物進化」の存在がある。すなわち,現代の「多様な生態系」に「多様な種」が生息しているのは,共通な祖先からの「生物進化」の結果である。そこで,「生物と環境:自然界のつり合い」の単元において,空間的視点である「生態系の多様性」と,時間的視点である「進化」をつなぐ単元開発を行った。そして,本研究では,中学生の学習過程における「生態系の多様性」の理解,及び「科学的進化概念」の形成,並びに「誤概念」保持の様相を検証することを目的とした。パフォーマンス課題をはじめとする各課題の分析や質問紙調査の結果から,「生態系の多様性」への理解は一定程度促されたが,同時に生物学上の誤概念の保持の様相も明らかになった。特に,「優れた者が生き残る」などの誤概念は払拭されにくいという結果になった。

  • ―「地学基礎」を履修する高校生を対象として―
    西内 舞, 川崎 弘作, 雲財 寛, 稲田 結美, 角屋 重樹
    2020 年 60 巻 3 号 p. 615-626
    発行日: 2020/03/30
    公開日: 2020/04/15
    ジャーナル フリー

    本研究では,学習者の理科学習の動機づけ向上のために「科学的能力」から「理科学習の意義」を認識する学習指導法を考案し,その効果を検証することを目的とした。そして,「科学的能力」について直接教授する学習と,普段の理科の学習の中で科学的能力を身に付けていると学習者自身に意識させる学習の二つからなる学習指導法を考案し,高校1年生を対象に,その効果を検証した。その結果,学習者が「科学的能力」を「理科学習の意義の認識」として認識すると,自律性の高い動機づけのうち「内発的調整」,「同一化・将来」,「同一化・成長」を向上させる指導法として有効であった。

  • ―off-lineメソッドの限界と今後に向けて―
    原田 勇希, 久坂 哲也, 草場 実, 鈴木 誠
    2020 年 60 巻 3 号 p. 627-641
    発行日: 2020/03/30
    公開日: 2020/04/15
    ジャーナル フリー

    学校教育においてメタ認知能力の育成は重要視されており,理科教育学においても個人のメタ認知能力を測定するための質問紙が開発されてきた。一方,近年の研究によると,質問紙法などの自己報告による測定方法(off-lineメソッド)では,メタ認知の測定は難しいことが指摘されている。本研究ではこれまでに開発された理科教育用メタ認知測定尺度が,真にメタ認知を測定できているかを確かめるため,その収束的妥当性と弁別的妥当性を検討することを目的とした。研究の結果,メタ認知測定尺度と理科の学業成績(全国学力・学習状況調査)との間に実質有意味な正の相関が確認できなかったことから,収束的妥当性は認められないと結論づけた。また自己愛傾向や社会的望ましさ反応バイアスとの確かな正の相関が確認されたことから,弁別的妥当性は認められないと結論づけた。以上の結果をもとに,現在の理科教育学におけるメタ認知の測定方法の限界と今後の方策について考察した。

  • ―幼小移行期の理解の変化に着目して―
    宮城 利佳子
    2020 年 60 巻 3 号 p. 643-653
    発行日: 2020/03/30
    公開日: 2020/04/15
    ジャーナル フリー

    本研究は,幼小移行期の子どもが,ツル性の植物の水吸収・運搬を植物器官と結びつけてどのように理解しているのかについて,理解の変化の実態を描き出すことを目的とする。幼稚園2園,計33人を対象に縦断調査を行い,器官機能理解の変容の特徴を明らかにした。幼小移行期の植物理解について,①理解の変化のパタンは多様であること,②水吸収に関係する器官として,根とツルを比較すると,根の理解が先行する可能性が高いこと,③子どもは植物の器官機能の説明に擬人的な表現を用いること,④変化の過程で器官機能として,植物に意思を持たせるような擬人的な説明の減少が見られることが明らかとなった。

  • 宮田 斉
    2020 年 60 巻 3 号 p. 655-662
    発行日: 2020/03/30
    公開日: 2020/04/15
    ジャーナル フリー

    子どもは電流の方向性と保存性の概念を習得し難いと報告されてきた。本研究では,Ohmの法則やKirchhoffの法則に基づき豆電球内を流れる自由電子の運動エネルギーを模擬的に算出し,その大きさの違いを基に豆電球の明るさが異なる原因を論証するという指導法を開発した。2019年,授業実践による事例的研究を行った結果,この指導法は中学3年生の文脈依存度に関わりなく電流の方向性と保存性の概念の習得を促すことが示唆された。

  • ―初等教員養成課程学生を対象として―
    山田 貴之, 松本 隆行
    2020 年 60 巻 3 号 p. 663-673
    発行日: 2020/03/30
    公開日: 2020/04/15
    ジャーナル フリー

    本研究では,初等教員養成課程学生を対象とした質問紙調査の結果に基づいて,「理科に対する興味」が「媒介要因」を経由し,「主体的・対話的で深い学び」に影響を及ぼすという因果モデルを仮定し,その妥当性について検討することを目的とした。その結果,「理科に対する興味」(「因子4:思考活性型」,「因子5:驚き発見型」)が,「媒介要因」(「因子7:批判的思考」,「因子8:学習行動」)を経由し,「主体的・対話的で深い学び」(「因子13:深い学び」,「因子14:対話的な学び」,「因子15:主体的な学び」)に直接的,間接的な影響を及ぼしていることが明らかとなった。これは,理科授業において,教師が驚きと発見のある事象や,思考を活性化させる事象の提示を工夫することで,学習者の興味が喚起されるとともに,「批判的思考」と「学習行動」が向上し,結果的に「主体的・対話的で深い学び」の実現につながることを示唆するものである。本研究により得られた知見は,「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けた授業の工夫や指導法などを充実させていく必要があるという学習指導要領の方向性と一致し,理科授業において,「主体的・対話的で深い学び」を成立させるためには,「理科に対する興味」を喚起するとともに,「批判的思考」と「学習行動」の向上を促す指導の可能性を裏付ける根拠と示唆を得ることができた。

  • 吉田 美穂, 川崎 弘作
    2020 年 60 巻 3 号 p. 675-685
    発行日: 2020/03/30
    公開日: 2020/04/15
    ジャーナル フリー

    本研究は小学校理科の問題設定場面における,「なぜ」という探究の見通しを持たない疑問を「何が」や「どのように」といった探究の見通しを含む問いに変換する際の思考力に着目し,その育成を目指している。このような疑問から問いへの変換における思考力を育成するにあたり,その変換過程は「疑問を認識した後に仮説を形成し,形成された仮説を踏まえて問いを設定する」(「疑問の認識→仮説の形成→問いの生成」)というように先行研究により整理されているが,これを基にした小学生を対象とする実態調査は行われていない。このため,本研究は疑問から問いへの変換過程の中でもとりわけ「仮説から問いへの変換」(「仮説の形成→問いの生成」)に着目して評価問題及び質問紙を作成し,小学生の実態調査を行った。その結果,小学生は仮説から問いへ変換することができないということ,また,その原因として,問いの形式に関する知識や問いへの変換に関する知識が不足しているということが実態として明らかになった。

資料論文
  • ―学生の意欲を高めるための学習課題とグループ構成からの考察―
    小長谷 幸史, 寺木 秀一
    2020 年 60 巻 3 号 p. 687-694
    発行日: 2020/03/30
    公開日: 2020/04/15
    ジャーナル フリー

    近年,化学と生物学の境界的な領域である生化学,分子生物学,有機化学などの分野が著しく発展している。これらの分野で扱われる生体分子を学ぶことは生命科学系統の大学で学ぶうえでの重要な基礎となっているが,苦手意識を持つ学生も少なからず存在している。分子模型を用いた生体分子の学習は分子の形を実感を伴い理解するために有効な手段であるが,高分子化合物を扱う場合には分子模型に不慣れな学生は作業に時間がかかることや模型のセットに含まれる部品数などが制限要因になる場合がある。このような状況に対して,模型の組み立てをグループ学習の授業形式をとり,協働して作業をすることで時間の制約は緩和され,複数セットの分子模型をグループ内で共有することで部品数不足の問題も解消されると考えられた。そこで本研究では大学の生命科学系学部1年生の,入学時に行ったプレイスメントテストの点数が最も低かったクラスの生物学の授業で,生体分子への理解を深めるために分子模型を利用したグループ学習を行った。グループは3〜5名にして,脂質,糖質,アミノ酸,ペプチドおよび核酸に関する分子を組み立てる作業を行った。模型の課題ではグループ学習で学生が組み立てた模型の構造に間違いがあった場合でも,軽微な修正を指示するだけで完成させることができ,全てのグループがほぼ全ての課題を完成させることができた。また,授業の最終日に筆記試験による到達度の確認を行った結果,過去の授業ではわずかにみられた正答率20%未満の学生がみられなくなり,正答率40%未満の学生にも減少傾向がみられたことから分子模型を組み立てることにより学生の理解が深まったことが推察された。このことから,分子模型というツールを用いたグループ学習は,学生の協調性を育み,それにより化学と生物学およびその境界領域を学ぶための基礎を学ぶことに有用であることが示唆された。

  • ―中学校理科第3学年「地球と宇宙」の授業への試験的導入について―
    山本 浩大
    2020 年 60 巻 3 号 p. 695-700
    発行日: 2020/03/30
    公開日: 2020/04/15
    ジャーナル フリー

    中学校理科第3学年第2分野「地球と宇宙」の「太陽系と恒星」では,太陽の観察を行い,その観察記録や資料に基づいて,太陽の特徴を見いだすことを目標としている。その中には,黒点の観察も含まれているが,太陽直径の推測が生徒実験として導入されている事例はない。本研究では太陽を直視せずに太陽直径を生徒に算出させる方法を授業で導入し,算出精度を向上させるための教材教具の工夫とそれによる生徒の太陽に関する興味の変化を明らかにすることを目的とした。太陽直径を1,391,400 kmとした場合,ひもを用いた平成28年度は約70%の班が,光学台を用いた平成29年度は約80%の班が誤差30%未満で太陽直径を算出した。太陽像の直径とピンホールから太陽像までの距離の関係において,理論値から算出される近似直線の傾きと実測値から算出される近似直線の傾きに差があるかを調べるために,t検定を行った。平成28年度は有意差があり(df=44,p<0.01),平成29年度は有意差がなかった(df=29,p=0.4332)。授業の前後で,太陽の興味に関するアンケートを実施し,事前には約50%の生徒が太陽に興味があると回答し,事後には約70%に上昇した。太陽に加え,他の天体の大きさや地球からの距離に興味を示していた。実験時に,はっきりした太陽像の大きさを測定させる操作に課題が残った。

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