理科教育学研究
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原著論文
仮説設定のための指導方略の提案とその試行
―小学校第5学年「電流がつくる磁力」を事例として―
比樂 憲一遠西 昭寿
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2020 年 61 巻 2 号 p. 321-328

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抄録

学習者が明確な目的を持ち,仮説を立てて観察・実験が行われるには,その実験で確かめようとする理論だけでなく,その理論が含まれる理論体系全体が観察・実験に先だって概観されている必要がある(遠西・福田・佐野,2018)。本研究はこの視点に立って,このような「先行的了解」を保証し,明確な目的を持ち仮説を設定して実験に臨ませる小学校第5学年「電流がつくる磁力」の実践的研究である。本実践では,短文や教科書の先読みによる「テクストの通読」とより基本的な「基礎実験」の導入による「先行的了解」の形成によって,探究活動過程全体と探究活動を構成する個々の観察・実験を見通すことができた。その結果,児童は解決すべき問題を科学的な文脈の中に発見して目的を明確にし,さらに実験に方法的根拠を与えている理論を生成して仮説を設定することができた。仮説は実験を有意味なものにし,児童自身による実験の成否の評価を可能にして理解を確かなものにした。この確かな理解はそれを可能にした基礎実験に対するコミットメントを強化し,「短文」や教科書の記述の理解をさらに深めるという循環的理解を生じて,電磁石理論の体系全体への深い理解を可能にした。

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© 2020 日本理科教育学会
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