理科教育学研究
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原著論文
中学生・高校生・大学生の科学的測定の不確かさの理解
―正確さ・精密さ概念を中心として―
古賀 康裕内ノ倉 真吾
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2021 年 62 巻 2 号 p. 415-429

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抄録

本研究では,中学生285名・高校生137名・大学生250名を対象として,質問紙調査(オンライン調査を含む)により,校種,履修科目や専門分野の相違に着目し,科学的測定の不確かさの理解の特徴を探った。その結果,次の点を指摘した。第一に,質問紙調査では,校種間で統計的な有意差が見られ,中学生と比べて,高校生もしくは大学生の合計得点が高い傾向が示された。高校生では,測定の文脈とした物理を履修している生徒の方が,得点が高い傾向があった。大学生では,専門性による違いは,ほとんど見られなかった。第二に,測定における不確かさの発生について,生徒・学生は,必ずしも十分に理解していなかった。第三に,測定で不確かさが生じる要因について,中学生は,大学生などと比べて,人的要因や道具的要因への言及が相対的に少なかった。第四に,道具的要因としてのアナログ・デジタル測定機器の選好について,アナログ温度計の選択理由は,視認性,操作性,適時性であったのに対して,デジタル温度計のそれは,素朴な意味での正確性であった。第五に,測定での代表値や参照値の特定について,少なくとも6割程度の生徒・学生は,平均値を選択しており,参照値を求められていた。第六に,測定の正確さと精密さについて,生徒・学生は,双方を考慮して,測定の適切性を考えられていなかった。第七に,測定の繰返し性と再現性について,生徒・学生は,正確さよりも精密さの方が理解しており,ある一定程度に測定値が集まっているものを適切に測定できていると判断していた。これらを踏まえて,科学的測定の不確かさに関する理解と,科学的な内容知識などとの関連性を探ることや,科学的測定の不確かさに関する教育内容の明確化と体系化が必要であることを指摘した。

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© 2021 日本理科教育学会
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