2021 年 62 巻 2 号 p. 431-443
最近の理科教育では,子どもの思考力や表現力の更なる育成を目指すことが重要課題の一つとなっている。子どもは,理科において多様な表象のモード(言葉や記号,表,グラフ,図など)を互いに関連付け,思考・表現しながら学習を進めている。本研究では,それらの表象のモード間の接続および変換過程について,その実態を明らかにすることを試みた。具体的には,上記の実態を捉えるためのモデルを提案するAirey & Linder(2009)の指摘を基に,小学校理科授業を事例に分析し,表象のモード間の接続が形成される実態を捉え,学習の中で表象のモードの接続および変換過程の質的変容を捉えた。事例的分析の結果から,小学校理科学習において表象のモード間の接続は5つのパターンに分類されることが明らかとなった。また,理科の学習過程おける表象のモードの接続と変換に関わる要因を明らかにした。