2022 年 63 巻 1 号 p. 169-178
本研究では,BSCS 5E Instructional Model(5Eモデル)を参考にして,非医療系の大学に所属する女子大学生(本稿では一般女子大学生と記す)向けの生命科学倫理教育のための教養科目として試行的授業プログラムを立案した。その実践を通して,1)生命倫理教育テーマとしての「終末期」の妥当性,2)5Eモデルの援用によるプログラム構成の有効性と課題について検討した。検討の素材には,参加学生の記述した「終末期に大切にしたいこと」を用いた。本研究において,まず「終末期」というテーマは参加学生の間に浸透していない生命倫理問題のひとつであることが明らかになった。このテーマに対して5Eモデルのプロセスに基づき,参加学生には関与させることから始めて,具体的イメージの創出をはかるためのカード型ゲーム,ドキュメンタリー映像資料の活用による,探索,説明,精緻化をはかり,最後に評価として「終末期に大切だと思うこと」を表させるやり方を展開した。5Eモデルを参考にしたプログラム展開により,認知度の低かったテーマに対して,参加学生の率直で道徳的な意思を導き出すことに成功した。また,「終末期」は生死を対象とする個々人の倫理観形成が,自分の率直な思いを重ねながら構築できるテーマになると分かった。本プログラムは一般女子大学生に「生」を支えるあり方について考えたり,価値観の変容を導く一助となるテーマと内容であったと理解された。