理科教育学研究
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原著論文
モンゴル国小学校理科の動画教材の問題解決場面の分析
―「てこ」の単元を用いて―
日上 奈央子
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2022 年 63 巻 1 号 p. 161-168

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抄録

本研究の目的は,モンゴル国小学校理科の動画教材の問題解決場面を分析し,同国政府の目指す「子どもの発想や思考を促す指導」及び初等教育コアカリキュラム理科の目標である「問題解決過程の習得」に沿った教材となっているか否かを,モンゴル国,日本の両国で取り扱われている内容である「てこ」を素材として明らかにすることである。問題解決場面及び問題解決場面のつながりについてそれぞれルーブリックを用いて分析し,研究対象のモンゴル国の動画教材について以下6つのことが明らかとなった。①コアカリキュラムの理科の目標に示されていない課題場面は設定されていない。②てこの単元の2つの動画の評価の合計数値の差は比較対象の2つのWEBサイトに比べて大きく,場面,問い,思考を促す試みの3つの設定において各動画でばらつきが大きい。③背景,仮説,方法の3場面において問いや思考を促す試みが比較的少ない。④基本的な問題解決場面である背景から考察の6場面の設定が見られる。⑤問題と考察の2場面は他の場面に比べ,子どもの思考を促す試みがなされている。⑥問題と考察の場面に関連性は見られるが,他の場面との関連性は限定的である。以上のことから,モンゴル国政府の目指す教育方針やコアカリキュラム理科の目標に沿った動画教材とするためには,問題と考察の2場面以外の問題解決場面においても問いや子どもの思考を促す試みを設定し,問題解決過程全体を通して関連性を持たせることが必要である。

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© 2022 日本理科教育学会
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