2022 年 63 巻 2 号 p. 415-423
身近な現象である雲を,授業の中で実際に観察する機会は少ない。本研究では,学習者個人が持つ端末により雲のタイムラプス動画を撮影させ,雲の特徴,特に動きと発生について捉えることができるかどうかを調査した。雲の動きが比較的捉えやすい秋を対象として生徒の所有する端末を利用して任意の日に撮影させ,得られた動画から読み取れる雲の特徴を発表させた。撮影した動画と発表内容を分析した結果,82%の生徒が問題なく動画撮影に関係する端末の操作を行うことができ,高校生程度の端末の操作に慣れている生徒であれば,各自の端末を活用することが可能であることが示唆された。しかし,個々人の端末を用いて撮影した場合,教材として見やすい動画が撮れているとは限らない。生徒一人ひとりが得た動画から雲のどういった特徴に着目する傾向があるのか指導者は把握しておくことが望ましい。通常の空の観察に比べ,タイムラプス動画では雲の動きや発生を捉えやすく,動きは100%,発生は84%が撮影できていたにもかかわらず,指導者が何を観察するのか指示しなければそれらは着目されにくいことが明らかになった。この背景として,実際の空で雲の動きや発生を観察した経験が乏しいことが原因の1つと考えられ,室内実験のみではなく,動画などを用いて実際の様子を観察する活動を取り入れることが望まれる。