理科教育学研究
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原著論文
小学生の科学的な問題解決の過程における「結果」と「考察」に関する理解
―観察と推論の区別という観点より―
桃原 研也内ノ倉 真吾
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2024 年 64 巻 3 号 p. 313-327

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抄録

本研究では,小学生192名を対象として,観察・実験活動における「結果」と「考察」に関する理解の特徴を質問紙調査及びインタビュー調査を通じて探った。その結果,次の点を指摘した。第一に,小学生は,「結果(観察したこと・調べたこと)」と「考察(結果に基づいて考えたこと)」については,「結果」は,観察・実験を通して見たことや事実である,「考察」は,結果に基づいて作り上げた考えや意見である,とおおよそ区別して理解できていた。第二に,小学生は,自然の事物・現象に関する記述が提示された場合,「結果」と「考察」を区別できるが,「結果」に比べて「考察」であることを認識するのが難しい傾向が見られた。第三に,観察・実験活動における観察行為や測定行為との関連から,「結果」と「考察」を区別しようとする児童がいる一方で,特徴的な文末表現という言語的な側面から,「結果」と「考察」を区別しようとする児童も見られた。また,関連の科学的な知識を保持している場合,行為的な側面からではなく,内容的な側面から,客観的な事実として認識されうる可能性も示唆された。第四に,「結果」「考察」の誤謬性・再現性・客観性に関係して,一部の児童は,「結果」「考察」のどちらにも誤謬性があり,「結果」には再現性が求められ,「結果」「考察」のどちらも客観性が大切だと理解していた。第五に,「結果」に基づいて「考察」を構成できていた場合でも,「結果」と「考察」を結びつけた一連の記述を構成することは難しく,必ずしも「結果」が明示されていない「考察」を記述する傾向が確認された。これらを踏まえて,理科指導への示唆として,観察・実験における「結果」や「考察」の性質について,明示的に教授することや「結果」と「考察」を結びつけた一連の記述を構成する機会を設定することを指摘した。

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