2017 年 32 巻 1 号 p. 61-65
75歳,男性。初診1年前から左胸部に母指頭大の腫瘤が出現した。徐々に増大し左側胸部に18 cm×15 cm,弾性硬で可動性が不良な皮下腫瘤を認めた。生検組織の病理所見では顆粒細胞腫であったが,臨床的に悪性顆粒細胞種を疑い拡大切除した。表層に近い腫瘍では生検時と同様の所見を示したが,下床近傍では悪性顆粒細胞腫の診断基準を満たした。術後4年後に左側腹部痛を自覚し,造影CTで胸腹部に多発する結節がみられた。悪性顆粒細胞腫の転移と診断し,年齢を考慮し緩和ケアの方針となった。悪性顆粒細胞腫は稀な疾患であり,起源として顆粒細胞腫が悪性転化する説と,悪性顆粒細胞腫そのものが発生する2つの説がある。本症例では,顆粒細胞腫と悪性顆粒細胞腫が同一の腫瘤に混在しており,良性腫瘍が悪性化する可能性を示唆していると考えられる。今後は症例の蓄積により,その病態の解明が望まれる。