2019 年 33 巻 3 号 p. 215-220
56歳,女性。X-8年より両側頬粘膜,舌にびらんが出現し,X-6年からX-1年までに舌と上下口唇・粘膜病変を口腔外科にて4度生検されるも特異的所見を認めず,当科へ紹介受診となった。当科での頬粘膜部の生検で扁平苔癬と診断し,プレドニゾロン,エトレチナート,ミゾリビン等で加療されていた。X-1年1月頃より上口唇に疣状角化性局面が出現,生検で有棘細胞癌と診断し高線量組織内照射療法を施行した。治療後一旦縮小したが7ヵ月後のX年9月より再度増大した。上口唇の再発性有棘細胞癌および硬口蓋の白色隆起局面に対し,顎動脈および顔面動脈へ硫酸ペプレオマイシンの選択的持続動注療法を施行し,投与数日後より著明に平坦化した。現在再発を認めていない。口唇および口腔内に多発する疣贅疾患としてOFPと最終診断した。OFPとは疣状癌の臨床病理学的な一亜型であり,外科治療に加えレーザー焼灼,レチノイドなどで治療されるが再発を繰り返すことも多い。
口唇有棘細胞癌に対する選択的動注化学療法は,外科治療困難例に根治も期待できる治療方法の一つである。自験例のような口唇および口腔内に病変が拡がる症例に対しても有効と思われ,今後の治療症例の蓄積が必要である。