2024 年 39 巻 3 号 p. 306-311
70歳,男性。6年前より右臀部に腫瘤が出現し,徐々に拡大した。初診時には80×80 mm大の易出血性紅色腫瘤を認め,皮膚生検で脂腺癌と診断した。CTで右鼠径リンパ節,右外腸骨リンパ節,右閉鎖リンパ節に腫大を認めた。原発巣拡大切除と右鼠径・外腸骨・閉鎖リンパ節郭清を施行するも,術後6ヵ月で右閉鎖リンパ節に再発した。原発組織を用いて包括的ゲノムプロファイリング検査を施行したところ,MSI-High,TMB-High,MSH2のナンセンス変異が判明し,ペムブロリズマブの使用が推奨された。3回投与後の治療効果判定は部分奏効であった。以降,開始から1年となる現在まで増悪なく同治療を継続している。Muir-Torre症候群を想起すべき既往歴や家族歴のない孤発性の脂腺癌であっても,MSI-Highを示して抗PD-1抗体薬が奏効する場合があるため,包括的ゲノムプロファイリング検査の積極的な施行が望まれる。