皮膚の科学
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症例
遺伝性平滑筋腫症腎細胞癌が疑われた多発性立毛筋性平滑筋腫の1例
森川 和音金田 一真芳川 た江子森脇 真一
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2025 年 24 巻 1 号 p. 27-32

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抄録

28歳,女性。腹痛で近医外科を受診し,腹部単純 CT で虫垂炎と診断された。その際に右腎の結節影を指摘され当院腎泌尿器外科に紹介受診となり,腹部造影 CT にて右腎細胞癌が疑われ右腎摘出術を施行する方針となった。同時に,以前から上肢や胸部に皮疹があると患者本人の訴えがあり,精査加療目的に当科紹介となった。初診時,前胸部と前腕部に小紅斑が多発していた。病理組織学的に真皮浅層に紡錘形細胞の不規則な増殖を認め,免疫組織学的染色で α-SMA,desmin ともに陽性であったことから,皮膚平滑筋腫(多発性立毛筋性平滑筋腫)と診断した。また,腎腫瘍と多発皮膚平滑筋腫の合併から遺伝性平滑筋腫症腎細胞癌(hereditary leiomyomatosis and renal cell cancer : 以下 HLRCC)1) が疑われた。その後,腎泌尿器科にて右腎摘出術が施行され,右腎腫瘍は病理組織学的に淡明細胞が胞巣を形成し管腔構造を呈しており,免疫組織学的染色で TFE3(+)であることから,腎細胞癌(Xp11.2 転座型)と診断された。遺伝学的検査では HLRCC の原因となるフマル酸ヒドラターゼ(fumarate hydratase ; 以下 FH)をコードする FH 遺伝子変異は同定できなかった。HLRCC は,多発性立毛筋性平滑筋腫に子宮筋腫や腎細胞癌を合併する疾患で,FH 遺伝子に変異が同定されているが,遺伝学的検査で変異が確認できない症例も報告されている。自験例では HLRCC を否定しきれず,当科・腎泌尿器外科にて経過観察中である。HLRCC は稀な疾患であり,今後の症例の集積と詳細な解析が待たれる。(皮膚の科学,24 : 27-32, 2025)

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© 日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
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