抄録
61歳,女性。アナフィラクトイド紫斑の診断のもとに下肢の安静とステロイド剤の大量全身投与,第XIII因子製剤投与などにて入院加療を行っていた。紫斑の消退後に血液凝固能の異常が出現し,深部静脈血栓症と肺塞栓症の合併が発見された。肺塞栓症は深部静脈血栓症の重要な合併症であり致死的であるが,本症例では一時的下大静脈フィルターと抗凝固療法にて治療を行い,死には至らなかった。また,本症例においてはアナフィラクトイド紫斑に対する下肢の安静にくわえて,肥満(身長150cm,体重58kg)やステロイド性糖尿病という深部静脈血栓症の発症に関わる危険因子を有しており,これらが血栓形成に関与したと考えられた。