2002 年 1 巻 1 号 p. 7-14
現在の遺伝子治療は当初考えられていたゲノムを治療するものではなく, 遺伝子を用いて欠損したり低下している機能を補う補充療法である。補充療法のメリットの1つは原因遺伝子が不明の場合でも病態解析が十分進んでおれば治療対象になりうるということである。その観点から, 従来, 癌, エイズ, 難治性の遺伝病といった疾患に限られていた遺伝子治療の対象疾患は, 疾病の分子レベルでの解析が進むにつれ, 一般の生活習慣病にもその範囲が拡大された。既存の技術でも効果が期待できる疾患も存在する。しかし未だ多くの難病は遺伝子治療の効果は不十分であり, 遺伝子導入ベクターの改良, 新たな導入技術の開発が必要とされている。