抄録
サル(霊長類)のロコモーションを調べる実験研究の多くは,直立二足歩行というヒト独自のロコモーション様式の進化と適応に関する手がかりを得ることを目的として行われてきた.研究は大きく2つに分けられ,ひとつは二足歩行へ至る進化と適応を探るもの,もうひとつは二足性獲得後の歩行の進化と適応に関する手がかりを得ようとするものである.筆者は,前者に関連して,直立二足歩行の獲得に大きな影響を与えたとされている木登り運動の分析を,後者に関連して高度に二足訓練されたサルの歩行分析を行っている.それらの具体例を通して,霊長類ロコモーションの実験的研究の実状について簡単に紹介する.