抄録
転倒は子どもの非致死性の怪我要因の半数以上を占めている.子どもの歩行は年齢があがるに従って変化していくことが知られている.本稿では,身体重心位置と圧力中心位置を結ぶ直線が垂直方向となす角度である傾き角に注目し,縦断的に計測した歩行データを用いて,成長による歩行中の傾き角の変化を明らかにした.歩行中の左右方向への傾き角は年齢があがるに従って有意に小さくなることが明らかになった.一方で,進行方向への傾き角は年齢別に変化があるものの,その変化の傾向は単調増加とならないことが明らかになった.左右方向への傾き角の減少は歩行機能の成長に伴う歩行中の左右方向への身体の揺動の減少を表していると考えられる.一方で,前方への傾き角が単に身体の不安定性のみを意味するものではなく,歩幅獲得といった役割を担っていることや相対的に大きい前方への傾き角に対して,身長の変化の影響が表れていることが要因と考えられる.