抄録
痙縮に対する薬物治療として,2010 年以降ボツリヌス療法が急速に普及し,筋電,神経刺激装置等を併用した投与により,深層筋へのアプローチも可能となった.投与量上限があるため,費用(投与量)対効果の考慮を要し,投与ならびにリハビリテーションでは,評価に基づいた対象筋選定と目標設定が重要である.目標設定に応じたアプローチとして,拮抗筋の随意運動促進や随意運動介助型電気刺激の併用,装具療法,ストレッチ,関節可動域訓練等が挙げられる.痙縮筋により阻害されていた筋活動促通とともに,痙縮筋の粘弾性抵抗を減少させ,筋の機械的性質の変化を防ぐことが,投与後リハビリテーションの重要な役割である.投与後の痙縮低下期間は通常3 ~ 4 カ月とされているため,定期的評価は重要である.痙縮の客観的評価方法の確立と普及が課題である.