抄録
書字技能の習得は,他の多くの道具使用と同様に,手持ち操作の習熟を要するものである.と同時に,書字の技能とその習得の過程においては,他の道具使用とは異なる,固有の事情や制約もまた存在する.たとえばそのひとつとして,書字動作およびその習熟が,他者による識別を可能にする機会を外部の環境内にもたらすことに向けられているという,書字の機能がそもそも社会的なものであるという事情が挙げられる.本稿ではこうした書字技能特有の事情を考慮しつつ,字を書く身体動作において冗長な自由度がどのように組織化されているのか,また字を書くことを学ぶ中で子どもの動作がどのように変化するのかという点について,周囲の環境とのあいだの関係形成という視点から事例とともに考察する.